歯医者が苦手な小学生に「歯科医療センター」という選択肢を

小1男子、虫歯が見つかる

息子の話である。

 

幼稚園のときから3か月に一度は歯医者に通い、定期健診を行ってきた。

 

かかりつけの歯医者は小児歯科でもあり、新しくてスタッフさんも優しいとてもイマドキの歯医者だ。

 

小1の秋ごろ小さな虫歯が見つかり、「次回から治療しようね」と衛生士さんに言われた息子の顔がこわ張った。

『…削るの?』

 

帰宅して浮かない顔をする息子は、どうやら削ることが怖いらしかった。

 

「治療の方法はわからないから、次回衛生士さんに聞いてみようね」

 

うん、とうなづく息子。ここからが長かった。

治療前から不安で落ち着かない

歯科衛生士さんに事情を話すと、じゃあまず何をするかお話するね、とラミネートされた紙を見せてくれながら

治療方法を説明してくれた。

 

この器具を使って、こうやって風をあててと実演してくれるものの、結局息子は泣き出してしまった。

 

とにかく嫌だと。とにかく無理だと。

 

さすがに私も困り「大丈夫だよ!」「痛みが出る前に治さないとおやつもなしだよ?いいの?!」と半分説得しつつちょっと脅しつつ試みるも

 

「今日は無理そうですね」と衛生士さん。

 

「あと2回練習して、その後本番しようね」と約束をして次回の予約をとった。

 

2回の練習は問題なくできた。

 

3回目の本番、下の子がごねたので診察室には付いていかなかった。

 

母の私がいることで甘えるところがあるかも、と思ったのもある。が、読みが甘かった。

 

衛生士さんが待合室に私を呼びに来て

「息子くん泣き出しちゃって、ちょっと来てもらっていいですか?;」と。

 

診察室には女性の歯医者さんと診察台の上でうずくまる息子。

 

「ちょっと削ってみたんですけど、すぐ起き上がって『もう無理!』って」

「息子くん、大丈夫だよ、すぐ終わるから」

「息子くんより小さい子もできるような治療だから心配しないで」

 

と先生や歯科衛生士さんが説得するも『モームリ』となった息子に届くことはなく。

 

次回がんばりますと予約して帰宅した。

 

このために3回も歯医者に来てんのに…ヘタレすぎるやろ…。

 

車の中で私はため息をついた。

思い出して泣く息子

帰宅して2人になったタイミングで話を聞いたところ、息子は泣き出した。

 

息子が言うには「やるよ」とはまだ言われてないのにやられた、痛かった。

もう無理。ということだった。

 

情けないと思いながらも、先生と衛生士さんが息子と心を通じ合わせている感じはなく、そこは確かに少し引っかかっていた。

 

彼女たちは忙しいんだからそんなことをしている暇はないのは当然で不満があるわけではなかったが…。

 

息子は頑固で、こうとなったら動かないところや心が折れると1ミリも動けない子なのはわかっていた。

 

習い事の記事でも以前書いた。

なにか手立てがあるはずだ

息子は発達を指摘されたことはないが、繊細なところや頑固なところがあり、学校の行き渋りも経験していた。

 

そこから少しだけだが発達障害について私なりに勉強をしていた。

 

今は大人より子どもの方が発達障害への理解や配慮が進んでいる。

 

化学繊維が苦手な子や、体を触られるのが苦手な特性の子もおりそういった「人より感覚過敏な子」が歯医者で治療する術がないってことはないはずだ。

 

私は子どもの発達障害専門施設がある隣市に電話した。

歯科医療センターという選択肢

結局いくつか電話をして教えてくれたのは市の歯科衛生士さんだった。

 

歯科衛生士さんは息子のかかりつけ歯科医は小児歯科の専門でもあり、このあたりでは子どもにやさしい歯科だとした上で、

 

息子の行き渋りの話や習い事でのこだわりを聞き「歯科医療センターはどうか」と提案してくれた。

 

歯科医療センターとは。

歯科衛生士さん曰く、障がい者専門というわけじゃないから誰が行っても大丈夫らしい。

 

 

すぐにそちらに電話し事情を話すと、週に一回午前中しか開いておらず、できたら問診票を事前に取りにきて書いておいてほしいと言われた。

 

 

また念のためタオルと歯ブラシを持ってくるようにとも言われた(結局これは使わなかった)。

 

 

息子には、いつもと違う歯医者に行くこと(人によっては“いつもと違う”ことがストレスになることも)、学校に遅れること、母と2人だから下の子に邪魔されることはないしあなたが

嫌がることは絶対にしない、母がちゃんと見てるからねと言うと、頷いた。

 

 

息子も「虫歯を放っておいてはいけない」ということは理解しているようだった。

気配り心配りがすばらしい場所それが歯科医療センター

時間通りにセンターに着き待合室で待っていると、古い振り子時計に親子で見入った。

 

センターの建物も古いがこの時計も40年は前のもので息子は『トムとジェリーみたいだ』と興味深々。

 

するとスタイルのいい白髪のブルドッグみたいなおじいちゃん先生と、これまたスラッとした

品のいい優しそうなマダム衛生士さんが来て、

 

「こういうの好きか」と息子に話しかけた。

 

こくんと頷く息子に「でもこれ壊れてて鳴らないんだよアハハ」と先生は笑い、「部屋に案内するね、ついてきて」と言った。

 

この時点で内心(うわぁ、もうすでに良さそうな雰囲気だこれ!)と私は確信を深めていく。

お役所の会議室みたいな部屋にきちんとⅬ字で座ってくれる先生たち。

 

息子の好きなことや好きな食べ物を聞いたり、かかりつけや学校での検診は大丈夫だという話をした。

 

私から登校の行き渋りの件やこだわりの強さなども話した。

最後に衛生士さんから「注射はいや?」「痛くない注射もあるんだよ」と言われ、みるみる表情が曇る息子。

私が慌てて「衛生士さんは念のため聞いただけだよ、大丈夫だよ」となだめると、ポロっとこぼれた涙を自分で拭った。

 

先生から「もしやるときはちゃんと確認するし、今日はやらない。今日やるのは、いつもの検診と同じ、歯の状態を見せてね」と。

 

そして「ちょっとずつ階段を登っていけばいいからね。焦らずやろう」と言ってくれ、それだけでもう心強かった…。

 

息子はこれまで予防接種で泣いてできないということはなかったから、おそらく歯医者に対する恐怖心から「注射」というワードに反応したんだろう。

 

また一点、ほかの歯医者と違うことは

「大声を出す患者さんがいるときもあるんだけど平気?今日は大丈夫だと思うんだけど」と言われたこと。

 

好きな音楽を流しながらやることもあるそう。

 

いろんな配慮があるんだなと思った。

いざ実践!!

やったことは普段の歯医者でやることとさほど変わりはなかった。

 

声掛けも、最近の歯医者ならこういう配慮はしてくれるだろうという感じ。

 

でもなんだろう…やっぱりベテランの方の安心感、経験値の差みたいなのはやっぱり感じる。

 

ちなみに、歯医者が怖いという小学生に一般的にどうするかAIに聞いた。

これはもう、親しかわからないことなんだけど。これでできる子とできない子が確かに存在する。

 

うちの息子は親との話し合いだけで解決できるタイプではない。

 

今までの経験上、人や環境に慣れるのにまず時間がかかる。

 

場所に慣れ、人への安心感が生まれないと話を聞くどころではない。そこにプロセスがいる。

 

相手を信頼するまで時間のかかる性格、ということが今回、虫歯治療の抵抗感と繋がっていたんだなと後から気付いた。

 

かかりつけの歯医者はかかりつけではあるが、歯科衛生士さんは固定でないので「場所は慣れてる」けれど人にはそこまで慣れていなかった。

 

定期検診では医師は現れないから、医師との信頼関係もない。

 

誰だって、怖いことは安心できる人にやってもらいたいよね。

発達凸凹の本を読んでいたから気付けたこと

読んだといってもたかが5、6冊だけど。

 

読んだ本の著者に共通して言えるのは、著者が使う「いろんな子がいる」という言葉に、こんなにも質量の伴う重さがあるのだな…ということ。

 

一般の人が使う「いろんな子がいるからね…」は「これ以上話してもまぁ無駄だよね…」という諦めが含まれているような気がするが

 

著者たちが使うそれは「いろんな子がいるから一緒に乗り越える努力を続けよう」という真摯で実直な、未来を諦めない言葉なのだ。

 

読んでいると大人がいかに人とその場しのぎでいい加減、不真面目に付き合っているかがわかる。

 

特に自分の半分も生きていない子どもに対して大人は蔑ろにしすぎていると感じる。

 

発達凸凹関係なく、大人も子供も関係なく、理解する努力を怠らない人や社会になって欲しい。

 

そういう著者たちの切実な思いを、本の中で私はみた。

ブルドッグ先生の診察の結果

息子の虫歯はかなり小さく乳歯なため、もしかしたら進行をとめ、フロスをがんばれば削ることなく抜けるのを待って過ごせるかもしれないとのことだった。

 

ただ小さすぎてレントゲンをとらないとわからないんだけど、今レントゲンの機嫌が悪くて撮れないんだよねアハハ、と先生。

 

最後は先生や衛生士さん、実習生のような若い子たちと全員ハイタッチして次回ね!と終わることができた。

 

9時に予約をとり、センターを後にしたのは10時だった。

 

表情のわかりにくい息子はノリノリとは行かずとも次回もちゃんと行けると言った。

今回行って思ったのは、センターのスタッフさんが本当にプロフェッショナルだったということ。

 

「いろんな人がいる」という言葉を実体験として経験し、対応してきた人たちの言動が確かに歯科医療センターにはあった。

 

だから「大丈夫だよ」という言葉が本当に信用に足り得るものになる

 

こういうことに息子は敏感なんだよな…。

 

ただこの対応は、経験値だけではどうにもならないところも感じた。

 

まずお金と時間に余裕がないとできない。

医者だって慈善事業じゃないんだから1人にこんな時間をかけていられない。

 

だから自治体のこういったセンターがあるともいえる。

 

市の歯科衛生士さんがこのセンターを教えてくれたとき、わが家の近所の歯医者にこのセンター出身の歯科衛生士さんがいることを教えてくれた。

 

今度、歯科衛生士さんが集まる研修があるからそのときチラッと息子くんのこと話しておくね!とも言ってくれた

(なんて気遣いのできる方なんだろう)。

 

虫歯治療が終わったら定期検診もそこに変えようと思っている。

最後に。甘えか過保護か

学校への行き渋りがあったときも思ったことだが、今は無理やり行かせたり、押さえつけて治療する時代じゃない。


とにかく話したり工夫して時間をかけるしか道がない。


でも「男なら歯医者が怖いくらいで泣くんじゃない!恥ずかしいわ!」と言葉で押さえつけてやりたい気持ちが

あったことも確かだ。


近所の仲良しのおばちゃんにこの話をしたら「息子ちゃんは女々しいところ

あるもんねぇ」とカラカラ笑われて返す言葉もないっす。


「繊細だ」という理由でこんなに手をかけてやらないといけないのかなぁ。

でもまだ7歳だしなぁ。

もう7歳、かもしれないけど人生で、無条件に甘えられるなんて今しかないよなぁ、と。


甘ったれたまま世に送りだしちゃまずいけど、自分との付き合い方や折り合いの付け方を学ぶことは、きっと楽に生きる上で力になるはずだ……

と私は自分に言い聞かせる。


べつに苦手な歯医者に行き続けなくても、歯医者なんてコンビニよりあるっていうんだからいろいろ探せばいい、とかさ。


はぁ。


夕方の忙しい時間に3回も予約とって行った親の身になれよな!

がんばりました、私も。



おわり