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3人目中絶を考えた女が産んだ今考えていること

「妊娠してしまった」

私34歳(専業主婦)、夫36歳(会社員)、子5歳(幼稚園)と3歳(来年幼稚園)。

 

妊娠がわかったときに思ったのは「無理だ」ということ。

無理すぎて泣いた。

 

何が無理だったのか。

・つわりが無理(わりと重い方)

・妊娠中のトラブル、帝王切開の術後の痛みが無理

・今さら離乳食とか無理

 

他にも、

・早く自分一人の時間が持ちたい

在宅の仕事や新しく物事をやり始めていた

・経済的に全く無理ではないけど余裕がなくなることは確か

・とにかく育児が好きではない

・子2人で手一杯。今の生活を守りたい

 

真面目で融通がきかない性格のため、キャパを超える妊娠出産は無理ということと、身勝手かもしれないけど自分のための時間が欲しいという思いがありました。

 

私「中絶したい」夫「無理」

いやーーーーほんとにつらかったわこの戦い。

 

“命は大切だ“、と信じて疑わない人を説得なんて無理だよね。

 

夫としては

「自分の子どもを殺すなんてできない」

ということで、中絶同意書にサインをもらうことはできませんでした。

 

自分の体に起きていることなのに、なぜ私が説得しなければならないのか。

本当に疑問だったし、今でも疑問に思ってます。

 

中絶がいいことなわけないけど、自分の体で責任をもって処置するのに。

それは肉体的に痛くて、精神的にも辛くて、女の私しか経験しないのに。

 

中絶しても妊娠しても育てても、女の負担のが明らかに大きいのに、選ぶ権利は全権私ではないという、この理不尽さよ。

 

つわりで入院。助産師さんたちの言葉に救われる

8週頃、つわりが酷くて入院しました。

夫との話し合いもずっとしていたんだけど、いつも私の考えは否定され、その度に「私の人生はどうなるんだ」という強い不安と強烈な気持ち悪さも相まって、希死念慮もありました。

 

人に相談できるわけもなく、ネットで似た境遇の人を検索すると産んでよかったと思っていたり、中絶してすごく後悔していたり、とにかく感情はいろいろで、でもなんとなく自分が納得いくような話はでてきませんでした。

 

心も体も苦しかった入院中の夜、助産師さんに胸の内を話しました。

命をたくさん見てきている助産師さんだから、私の考えは否定されたり、叱られるかもしれない。でも叱られたらそれはそれで、プロが言うんだからと諦めもつくのかもしれないという思いもありました。

 

私の話を聞いた助産師さんは、

「苦しかったですね。今でも十分がんばっているのに…どうして旦那さんは理解してくれないんでしょうね」

「話してくれてよかった。ママの幸せが一番大事ですよ。私たちスタッフは皆、ママの幸せを望んでる。」

ママが幸せじゃないと家族は幸せになれない。そういう決断(中絶)をすることは決して悪いことじゃないよ。」

 

こんな風に励まして、私を労ってくれました。

 

私の話を初めて聞いてくれたのは、働いて3年目の若い助産師さんでした。

その後私を心配して、30歳手前の助産師さんと40歳前後の助産師さんも話を聞いてくれましたが、3人ともこんな感じで「ママの味方だよ」と応えてくれました。

ネットの意見に惑わされず自分の気持ちを大事にして

ネットで「中絶」なんて調べれば、フルぼっこに合います。

正論を振りかざしてひどい言葉で攻撃してきます。

 

「性欲抑えられなかったくせに」

「気持ちいいことだけして人殺し」

「いい大人なのに最低」

「中絶したいなら勝手にすればいいけど“殺人”の自覚をもてよ」

 

中絶=悪だと信じ切ってる人に何を言っても無駄で、自分が傷つくだけでした。検索し続けるのはやめた方がいいです。

 

そういう意見を見る度に思っていたのだけど、

 

その人たちは、セックスは子作りのためにしかしないでしょうか。

絶対避妊に失敗しないんでしょうか。

妊娠中の体の痛みや、死ぬことだってある出産を代わってくれるんでしょうか。

生まれてきた子どもを代わりに育ててくれるんでしょうか。

それが無理ならお金でも出してくれるんでしょうか。

 

大変なことをしてしまったという自覚は、だれよりもあるから苦しんでるんだよ。

 

産んだら最後、だれも代わってくれないことをしようとしているんだよ。

 

最近のニュースのこと

先日熊本で内密出産が話題になりました。

母親への誹謗中傷も絶えません。毒親と思われる親となぜ離れないのか、暴力をふるうパートナーとなぜ別れないのか。産まれた子どもかわいそう、産むなよ。そりゃあ他人からしたらそう思います。

 

けれど実際中絶できない週数まできた妊婦を前にして、そんな話をして何になるというんでしょう。

叱ったり諭したりすることは必要だと思うけれど、産まれてくる命のために病院のスタッフはできうる限りのことをしているというのに。

 

 

 

 

また緊急避妊薬の市販についても昨年話題になりました(これについては、年度内の結論断念を厚労省が提案(2022.3.10))。

 

「安易に避妊しない男や女が増える」といった意見が女性からも出されているけど、普通に考えて「安易に避妊しない男女」に育てられる子どもはたまったもんじゃないのにね…。

 

「産まない権利」

中絶同意書にパートナーの署名が必要ということも軽くショックを受けたのだけど、なぜこんなに「産まない権利」は軽視され、誹謗中傷の対象となるのだろうと産んで2か月経った今も考えています。

 

夫もしかり、私の父なんかもそうですが「子どもの命は大事」「子どもをもつと幸せになれる」と信じて疑わず、妊娠に伴う母親の違和感・嫌悪感・恐怖感を受け入れてはくれません。

 

例えば授乳に関してD-MER(ディーマー・不快性射乳反射)という言葉が最近知られるようになりました。

授乳していると不安やイライラした気持ちになるというこの現象。「授乳という幸せな行為・幸せな場面」を信じて疑わない人からは絶対に理解してもらえないです。母親本人も「自分には母性がないのか」と悩みながら耐えて授乳をしていたという話も聞きます。

 

私はこの感覚はありませんが、妊娠中の異物感や不快感を感じていたので、わからなくはないです。

 

ネットで正論を振りかざす人もそうなのですが、なぜこんなに性行為や妊娠出産について神格化されているのだろうとも思います。

 

記憶はあいまいですが、民俗学者の宮本常一の「忘れられた日本人」の中に、戦前かもう少し前か、日本の性風俗はもっとオープンでおおらかなものだったと書かれていました。あのマルコポーロの著書の中にもそんな記述があるとかね。

 

「産まない権利」というのは、経済的に自立できない若い子とかが使うものであって、「自立した大人」が使うと身勝手だと言われる権利になってしまうのが苦しいと感じます。

中絶する本人にとっても、産まないことを、権利として振りかざしたいわけじゃない。そんなものでないことは重々承知の上で、それでも自分の身をもって選ぶことはそんなに非難されることかと、苦しんでいるのが現状だと思います。

 

私はなんのキャリアも持たないしがない専業主婦ですが。

 

 

新しい命は、私の実現したい未来より大事なのか。

私が叶えたいことは、身勝手でわがままなことなのか。

私の体は誰のものなのか。私の人生は誰のものなのか。

 

今でも考えて涙が出るよ。

 

3人目を出産して。子どもは可愛いよ

そもそも論なんだけどさ、中絶したい女性なんかいないよ。

 

こんな女だけど、子どもがお腹から出てきた瞬間、つーっと涙がこぼれました。

安堵が大きかったと思います。五体満足で生まれてくれて、私は私の責任を果たしたことへの安堵感。

 

最近の赤子はニコニコする時間も増えて、コロコロに肥えてきて、とても可愛いし、愛しい存在であることは確かです。

 

でも私は産後うつの傾向があると医者から言われていて、苦しい状態が続いています。赤子に対してネガティブな感情をもつことはないけど、育児につらくなって(もともと好きじゃないのでね笑)、涙がでて、薬も飲んでいます。

 

こんなふうに気持ちが落ち込む状態になりたくなかったし、薬を飲むような生活になりたくなかったと思います。

産んでなかったら精神科になんて通わなくてすんだのにとも思ってるから、「中絶しようと悩んだけど、産んでよかったよ!」というブログは書けないです。

 

「赤子は可愛く、産むんじゃなかったなんて思わないけど、それでもつらいよ笑」、という感想です。産んだからにはがんばるけどね。

 

 

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