「セクハラ」という言葉は、実は軽い
「セクハラ(セクシュアルハラスメント)」とは「性的嫌がらせ」という意味であり、その対象となる行為の範囲は広がっています。
例えば「髪切ったね」と言うだけでセクハラとされる場合もあります。
セクハラ防止のため軽い言動を含めるのはいいことかもしれないけど、逆にセクハラという言葉の罪の重さも弱くなり、「セクハラですよ」と言われても気にしない・反省しない人が増えているんじゃないかという気がします。
これは感想ではなく実感です。
多くの人が「スクールセクハラ」だと思っている行為、「部活で顧問に服を脱がされた」、「指導として体を触られた」、「恥ずかくなる言葉を言われた」…
それは「スクールセクハラ」じゃなくて「学校で起きた性犯罪」です。
あなたが実際にされた行為は「性犯罪」かもしれないのに、あなた自身がそれを「セクハラ」と位置付けるのは、自ら相手の罪を軽くしてあげていることになるかもしれません。
実際に体験したことが法律的にどうなのか考えてみる
過去に書いた体験談でセクハラだとして紹介した事例について、法律的にどうなのか、考えてみました。あくまで私見ですので、その前提でお読みください。
①合宿中、部員に対し「一緒に風呂に入ってやろうか」と発言する
どの都道府県にも大体「迷惑行為防止条例」といわれる条例(痴漢を防止するようなもの)があります。東京都の条例を例として挙げます。
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(東京都)
5条1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
1号 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
2号 (省略)
3号 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること
3号を簡単に言うと、「誰であっても、ちゃんとした理由がないのに、皆がいるようなところで、人が恥ずかしいとか不安に思うような、卑わいなことを言ってはいけない」という意味です。
当てはまりそうな気がしませんか。
ちなみに東京都の条例の場合、罰則は6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
②部活のトレーニング後「ちゃんと汗をかいているか?」と言って、部員の首元から服に手を入れて背中を触る
刑法第176条(強制わいせつ) 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
抵抗できない状態でわいせつな行為されたので「強制わいせつ罪」に当てはまりそうです。「暴行又は脅迫を用いて」とありますが、殴られたり脅されたりしてなくてもいいんです(同意していないのにいきなり体を触ること自体が「暴行」になるらしい)。「強制」という言葉のイメージとは違いますね。
また、上記①で挙げた条例の第5条1項1号に当てはまる可能性もあります。
ここまで私見を書きましたが、もちろん必ず犯罪が成立するわけではありません。「公共の場所」の意味とか、「わいせつ」の意味とか、問題となる点はあります。
しかし、間違いなく言えるのは、「セクハラ」だと思っていた行為が、実は「犯罪が成立するかもしれない行為」だったということです。
性的な自由は“法律”で守られている
人が性的に嫌な目に遭わないための法律は、強制性交罪、準強制性交罪、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪、強要罪、脅迫罪、青少年条例違反、迷惑行為防止条例違反など、いろいろあります。セクハラを受けた人は、相手の行為がどれかに当てはまりませんか。
セクハラが原因でつらい思いをした、学校に行けなかった場合は、慰謝料や損害賠償を請求することもできます。
犯罪の可能性があれば警察は捜査しないといけないし、民事訴訟は誰でも起こせます。「教育指導だった」、「性的意図はなかった」、「時効だ」とかいう反論は、基本的には告訴や訴えの“後”にすることになります。
簡単に言うと、セクハラは“いつでも”“法に問う”ことができるのです。
そして、これを理解すべきなのは、セクハラをする側の人間だと思います。
セクハラをしている人へ。否、すべての人へ。
この記事を読んでいるのは、セクハラをする側の人(自覚のない人も含めて)かもしれませんので、書いておきます。
今セクハラをしている人、過去にセクハラをしたことがある人、セクハラの自覚がない人も含めると、すべての人に対して言えること。
時代が変わり、セクハラの淘汰が始まっています。学生時代に受けた行為について大人になってから法に問うこともあります(法律的な時効は、あってないようなものです)。合意や許容があったとしても、次の日に「本当は嫌だった」と言われてしまえば、セクハラとされてしまうことだってあり得ます。
大多数の人はスマホを持っていて、いつでも録音、録画ができますし、メッセージのやり取りや位置情報の記録も残ります。証拠はいくらでも出てくるんです。セクハラをしたら、自らいつ爆発するかわからない時限爆弾を持つことになり、残りの人生を怯えて過ごす羽目になる危険があります。
「息苦しい世の中になった」とか言ってる場合じゃないんです。気をつけすぎるくらい気をつけましょう。
すでにセクハラをしてしまった人は、震えて待つしかありません。
セクハラに悩んでいる人へ。
セクハラを“しないように”気をつけることはできますが、セクハラを“されないように”気をつけることはできません。できないことなんです。
あなたがセクハラや性犯罪に遭った(遭っている)原因は、あなたの行動や不注意が原因では決してありません。何の落ち度もない人に、理不尽に降りかかってくるものなんです。
誰に何を言われても、あなたは悪くないということを理解して、自信をもって、あなたの人権を守る行動を取ってください。
まずは相談できる人、仲間を作ってください。信頼できる人(人に知られたくない場合は、秘密を守ってくれる人)、友達、親御さん、保健室の先生とかでもいいと思います。
どうか一人で悩まないようにしてくださいね。
セクハラをされても、その相手をやっつけたいわけじゃない、オオゴトにしたくないという方もいると思います。優しい、立派な考え方だと思います。
自分がどうしたいのか、整理の仕方は、過去の記事も参考にしてください。
最後に相談窓口の紹介を…と思ったら
読んでくれた方のために、セクハラ相談窓口を紹介しようと思い、検索してみたら…出てこない!
「部活 セクハラ 相談窓口」で検索しても、出てくるのは弁護士事務所、社労士、労働局などなど…部活って言ってんじゃんよ。
学生の総合的な相談窓口はあるけど、学校でのセクハラに特化した相談窓口は少ないみたいです(教育委員会が設置している県もある)。対策が遅れてるんですね…。
自分の県の教育委員会等が設置している相談窓口があればいいですが、窓口がわからないなら、「法テラス」に相談してみるのがいいと思います。未成年でも相談できますし、電話やメールをするだけで相談料がかかったりはしません(電話代はかかります)。内容によっては他の機関を案内してもらえます。
教育委員会さん、早く対策してくださいー!