【3人目中絶を考えた女のレビュー】「母親になって後悔してる、といえたなら」

以前書いた「母親になって後悔してる」のレビューはこちら

【レビュー】「母親になって後悔してる」【ネタバレ有り】

頭のよいNHKの女性記者がの女性のためを思って書いた本。

読み終えて思う率直な感想がこのタイトルだ。

書いたのは2人とも30代のNHKの女性ディレクターたちだ。

お2人の記事もあったので貼っときます。

https://telling.asahi.com/article/15526202

 

本書は2023年6月に報道番組「ニュースウォッチ9」で特集された内容と、

 

2022年NHKのウェブサイト上での投稿フォームに届いた反響から

再度取材をし、まとめられたものだ。

 

 

 

正直言って、最初は読むのが苦痛だった。

 

7人の母親のインタビューが掲載されているのだが、

 

「そりゃこんな状態で母親になったら後悔するよ」という

内容で。

 

「こんな旦那といることにまず後悔でしょうね…」とか

「いやその状態でその旦那となぜさらに子ども産んだんだ」とか

 

正直モヤモヤしながら読んでいた。

 

 

 

 

ドーナト氏の著書は学術論文の体をとっていたので

(個人的には論文のわりにはと思うこともあったが)

 

個人のバックグラウンドをそこまで掘り下げていないことが

 

読みやすさや公平さにつながっていたんだなと今は思う。

 

 

 

 

 

母親の自意識過剰・悲劇のヒロイン・諦めきれていない諦め。

私のこのモヤモヤは母親に対してのものかと思うと、

 

私も出産から3年近く経ち、そういう気持ちを忘れてしまったのかなと

本書の母親たちに少し申し訳ないような気もした。

 

本書の中に、少し前にXで話題になった話も出てきた。

https://president.jp/articles/-/88370?page=1

このニュースを見て、SNSのいろんな人の意見を読んだが、

 

私が思ったのはひとつ。

「インターネットで喧嘩すんなッ」

たまたまネット上の誹謗中傷に困っているという人から

相談を受けていたことが重なったんだけど、

 

ほんともうこれに尽きる。

 

みんなヒマか!アホか!

 

 

 

実際にこのファミレスうどん話をママ友からされたらさ、みんななんて答えるよ?

 

相手の話し方(ほんとにしんどいのか、愚痴なのか)を見つつ、

 

「男の人ってそういうことほんと気付かないよね~!

 

とかなんとか言って会話をしないかね?

 

『うわ、察してちゃんかよウザ』なんて思わないし言わなくないか。

 

ネット上のやりとりほんとだるいわ。

【マミーブレイン】マミーの脳はほんとにブロークン。

私の感じたモヤモヤには「母親たちの被害者意識のこじらせが鬱陶しい」

という感情が入ったのは確かだ。めんどくさいと思ってしまった。

 

でも母親になると子どものために脳がブロークンするのは有名な話だ。

 

10月に発表された研究では、その期間が妊娠前から産後2年経っても

続いているというホラーな結果も出ている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/5e71d4c10c95ec1bf6e949afcf0e0e5fceabf41e

クラスティル氏の脳を研究したプリチェット氏らは、灰白質の体積が妊娠中に4%以上減り、その減少が出産から2年後の研究終了時まで続いていたことを確認した。(中略)

 

しかも、灰白質が減ったのは一部の領域やネットワークにとどまらず、実に脳の領域の80%にも及んでいた。

個人差はあれど2年も。

 

 

被害者意識こじらせてるかもしれないけど、

脳が20%くらい委縮してるんだから

 

母親って、程度は違えど

麻薬やってる人と変わらないのかもしれない。

 

出てくる男性みんな「うーん…」な人たち。

本書に出てくる男性は育児への協力もなければ

人としての思いやりのかけらもないお父さんが主である。

 

正直「人としてどうなんだ」というレベルのお父さんたちなので

奥さんが「母親になって後悔する」のは当然の帰結という感想もある。

 

中には、4章「働く母親」のように

育児に協力的な父親もいて、妻は

 

「夫は協力できるところはしているし、

周りから見たらやってくれてるほうだとは思います。

だからあんまり弱音は吐いちゃいけないなって思います。」

 

と言っていた。

 

けれどこの夫、妻が「母親になって後悔している」

と初めて口にしたとき『正直、最初はかちんときました』と言ったのだ。

 

 

読んでる私は「は???」ってなった。

 

 

せめてそこは

 

「(夫もできる限りやれることはやっているつもりだったから)

複雑な気持ちでした」

 

 

くらいのことを言えよ、と。

 

人間的に未熟すぎんか?

 

 

この後 妻は、夫との認識の差異について

 

選択肢の有無とコミットメント(責任をもって関与する)の

度合いが違いすぎることに気付いていない

 

と述べている。

 

他の母親からも「父親にとって育児は“努力義務”にすぎない」

といった言葉が登場した。

父親の視点。

最終書では父親の視点も紹介されている。

 

1人は

「母に対する重荷と同時に父に対する重荷も存在していて、

(中略)とちらか一方だけを議論しても全く解決しません。」

1人は

 

「“頭の中の半分は子どものこと”という表現がありましたが、

父親だって頭の中は半分、子どものことです。

 

男女関係なく子どもを持って後悔することのないような

社会の仕組みになればと強く思います。」

このように書かれていた。

全然、 全く、意味不明である。

本書の中に語られるように、男性が働かされすぎである点は

理解できるし男性としても苦しいところだとは思う。

 

けれどこれらのコメントは4章の妻が、夫との価値観の違いに

愕然とするシーンを思い起こす。

 

根本的に価値観の違う人間に反論しても仕方ないと

ため息すらでる言い分なのだが、

 

結局「自分はわかってる」と思っている大半の男性は

こんなもんなんだろうというお手本な内容であった

冒頭の、NHK女性記者たちに話を戻す。

NHKという性質上「男性もっとがんばれよ」と

真っ向否定するようなことは言えない。

 

特に母親の後悔に関する論点は、怒りを伴う激しい非難があった

と本書にも書かれているが、それは想像にたやすい

 

筆者はその批判について

「母親の後悔に光があたり、共感だけでなく、

怒りの感情を伴う激しい非難の声が一定数あったことは、

 

『母親』という存在に対しての人々の期待の高さと、

それゆえに厳しい評価の目があることを、浮かび上がらせている。」

 

と述べている。

 

筆者たちが一番したかったことは

母親たちが苦しまずに済む方法を模索することである。

 

その解決策のひとつが、後悔を口にすることならば

 

誰かにきちんと聞いてもらうために、なるべく小さな声で

静かに語り始めることが必要だったのだと思う。

 

正当性を主張したいのではない。

ただ現状に目を向けてもらうためにできる最善を模索したのだ。

 

固定観念に縛られた強い口調の人たちと言い争うことでは

本懐を遂げられないことを知る賢い方々だなと思った。

女性にしかできないこと。女性がしたいこと。

数日前にこんな記事が出た。

男女平等の国スウェーデンでパートナーに養ってもらいながら

ゆるい日常をTikTokで発信するインフルエンサーが

いわゆる「専業主婦的」でいいね!と。

「専業彼女」ブーム?スウェーデンで注目の「ソフトガール」現象

今、母親という役割について議論されるようになった。

 

子どもを産めるのは女性だけである。

 

 

毎月頼んでもないのに生理がきて

「妊娠できるよ」と教えてくれるという

なかなか性能の高いアプリを入れた器である。

 

出産すると突然乳が固くなり、白い液体が出始め、脳まで変化させるという

摩訶不思議な器だ。

 

 

産むことを前提として作られた体で

産んで働いて家事も育児もはもう無理だとわかり始めている。

 

社会の仕組みが変わって男性の考え方が変わっても

先進国の出生率が伸び悩むように

 

協力や分担では解決できないことがあると

私たちは気付き始めている

 

男性とちがってできることが限られている女性は

 

多様性と言われる時代にむしろ性差を意識した上で

納得できる生き方を模索していかなければならないのだろう。

 

 

その上で母親たちが孤独にならない具体的な支援が

必要だと感じる。

 

孤独を深める産後の母たちに寄り添い

すぐに支援につなげられるもの…。なんて難しい。

 

それでも私が助産師さんたちに助けられたように、

その声に耳を傾ける人が今後増えていくことを願う。

 

おわり

Share:

人気記事

最新記事

サイト内検索

検索
カテゴリー
アーカイブ

こんな記事も読まれています

3人目中絶を考えた女が産んだ今考えていること

この件に関して現実世界で誰かと話をすることはない。けれど中絶に関して(それだけに限らないけど)女性や母親がラクになることを許さない風潮はなんなんだろうか。少なくとも肉体的負担は軽減させてあげたいとは何故ならないのだろう。バイアグラは簡単に承認されるような世の中なのにさ